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D60形ディジタル交換機

D60形ディジタル交換機の展示写真

初めてデジタル化された商用交換機

1982年に導入された「D60形ディジタル交換機」は、交換機能すべて(制御部・通話路スイッチ部)のデジタル化を実現した交換機で、電話局間をつなぐ中継用デジタル交換機として、交換機の小型化・収容数増の実現、ネットワークの大容量化・経済化に貢献しました。
また、音声のみならず音声以外の情報を同様に伝送可能なネットワークのデジタル化は、その後の高度情報化社会を見据えた先進的な取り組みでもあり、その一歩である「D60形ディジタル交換機」の急速な普及は、翌1983年より導入された加入者用のデジタル交換機(D70形)とともに、ISDNなど高度で多様な情報通信サービスの発展を支える礎となっています。

D60形ディジタル交換機開発の背景

1890年に東京-横浜間にて手動交換機を用いて始まった電話交換業務では、増大する需要に応えるため、自動交換機であるステップバイステップ交換機を1926年に導入しました。その後、クロスバ交換機の導入により、遠方へも即時に電話がつながる広域自動即時化が実現し、国内に広く電話が普及することとなりました。
電話の普及に伴い高度な電話サービスへの期待が高まったため、交換機の一部(制御部)をデジタル化し、ソフトウェア技術を採用した電子交換機(アナログ電子交換機)を開発しました。1970年代にはD10形自動交換機などを導入し、プログラム(ソフトウェア)で交換機の動作を制御できるようにしました。

電子交換機の研究開発が始まった1950年代からデジタル化の検討は行われていましたが、当時は経済性の観点から、交換機の交換機能すべてをデジタル化するには至りませんでした。その後、1970年代の集積回路(LSI)技術・時分割交換技術などの発展を背景に、アナログ部品で構成されていた通話路スイッチ部を含め、中継交換機内の交換機能すべてをデジタル化した「D60形ディジタル交換機」を開発し、日本初のデジタル電子交換機として商用化しました。

(1) 集積回路 (LSI) 技術

多数の素子(電子部品)を一つの半導体チップにまとめたもので、1970年代に集積度が飛躍的に向上しました。また、製造技術の進歩により量産化・高信頼化が進み製品価格も下がったため、「D60形ディジタル交換機」への実用が可能となりました。

(2) 時分割交換技術

符号化された音声信号や音声以外のデジタル信号を、時間をずらして送受信することにより交換機能を実現する技術です。「D60形ディジタル交換機」では、LSIを用いた「時分割スイッチ」を組み入れています。
D60形より前の電子交換機では、アナログの通話路スイッチを用いた「空間分割交換」方式が用いられていました。

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