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OB運営サポーターについて
動態展示用として復元に成功!「A形自動交換機」
2013年9月、1階ロビーの体験展示ゾーンに、「A形自動交換機」のスイッチとコネクタの動態モデルが仲間入りしました。
これは、1920年代に導入されたステップ・バイ・ステップ方式の自動交換機「A形交換機」で、大都市を中心に設置され、ダイヤル自動即時化に貢献したといわれています。1960年代にクロスバ交換機に取って代わられるまで、日本全国に電話サービスを提供し続けてきた立役者とも言えるでしょう。
実はこの交換機、史料館の倉庫に眠っていた部品を集めて、OB運営サポーターが着想から約2年かけて復元したものなのです。
■なぜ、「A形交換機」を復元しようと考えられたのですか?
(寺脇さん) 実は、最初からA形交換機を復元しようと思ったわけではありません。
私は交換を専門に研究してきたので、そもそもは、来館者のみなさんに、何か交換機の動く動態モデルをお見せできないかという想いからスタートしました。
史料館地下1階の倉庫にH形交換機のスイッチが保管されているのを史料整理作業中に発見し、そこで思いついたのがステップ・バイ・ステップ方式のH形交換機が、ダイヤルするたびにワイパがガチャガチャと動く様をお見せしたい、というものでした。
そこで、過去にH形交換機をつくっていた富士通の知り合いに相談をしてみたところ、かつてH形交換機の開発製造に関わったことのある元技術者(複数)を紹介してもらいました。すでに富士通でも復元作業中とのことで、同じ年の年末に早速見学せてもらいました。
一通りの規模の実際に動くH形交換機を目の当たりにして、驚くと同時に「史料館でもぜひとも実現したい!」という想いが強くなりました。
そこからは、図面、部品探しに奔走しました。武蔵野通研内の図書館で図面の調査を行い、史料館の地下だけでなく、横須賀の倉庫にまで足を運び、H形交換機の部品を探しました。ですが、復元に必要な部品は最後まで揃いませんでした。
そこで、「H形交換機」の復元は当面あきらめ、同じ倉庫に保管されていたA形交換機の「コネクタ」をなんとか動かせてみようということに的を変えました。
■「H形交換機」から「A形交換機」に切り替えた後、復元作業はスムーズに進みましたか?
(寺脇さん) やはり、部品を集めるのが非常に大変でした。
武蔵野通研図書館で、回路図集を見つけ、図面上で1本ずつスイッチの動作を追い掛けたところ、ラインスイッチが必要ということがわかりました。ところが、ラインスイッチが地下の収蔵庫にはなかったのです。
そこで、1階Aコーナーに展示しているA形交換機から、ラインスイッチを1個借用することにしました。それが去年の年末です。
ここからは、実物と回路図を突き合わせて動作を追っていく地道な作業の始まりです。OB運営サポーターの千葉さんにも手伝ってもらい、1本1本確認しました。
確認にあたり、テーブルの上に寝せておいては作業しずらいので、事務室においてあったスチールラックに紐で吊り下げ作業をはじめました。そのほか、ホームセンターで買ってきたアルミ板で固定したり、手元を明るくするライトを設置したり、秋葉原に部品を捜しに行ったり、創意工夫して組立て、配線していきました。
とても地道で根気のいる作業でしたが、電話機を接続してスイッチのワイパが動作したときの喜びはひとしおでした。
電話機を接続して、ワイパがガチャガチャ動いたということで、スイッチの動作までが完成したということになります。
ですが、さらに、リリリーン♪と呼び出し音を鳴らしたいという声が周囲からあがってきました。
そこで、横須賀の倉庫で見つけた「農村集団自動電話用信号機」(重量約100kg)を武蔵野に移送してもらい、数日間試験をしてみましが、信号のレベルが低く回転数も足りないため、結局呼び出し音を出すことができませんでした。
仕方がないので、疑似交換機を購入してもらい、中身を改造し、スイッチ回路に細工したもので、現在は呼び出し音を出しています。
また、ロビーに展示するにあたり、手を触れられないようアクリルケースを製作し、スイッチやコネクタの詳細が見えるようLEDライトも設置しました。
■いよいよ完成したわけですが、完成までの道のりの中で一番大変だった部分をお聞かせください。
(千葉さん)
ラインスイッチとコネクタをつなぐところが一番大変でした。
ラインスイッチとコネクタそれぞれの回路図はあったのですが、制御用のRT端子の接続のしかたが分からなかったのです。 この時期は、休みの日も頭を悩ませ、寺脇さんと何度もメールでやり取りをして相談しましたね。でも、試行錯誤する中で、やっと解決方法を見つけることができました。
(寺脇さん)
OB運営サポーター全員の応援があったからこそここまで来たと思います。
特に、交換機に接続する当時の主力電話機であった4号電話機の調整、修理を全面的に行っってくださった中澤さんの活動は欠かせませんし、 足達さんや俵さんからの様々な技術的なアドバイスも大変参考になりました。
■今後の展望をお聞かせください。
(寺脇さん)
今年の8月末に閉館した逓信総合博物館からいただいた「手動交換機」の復元に着手したいと考えています。 こちらも回路図が一切ないため、一本一本手探りの作業となりますが、まわりのOB運営サポーターの皆さんと協力しながらぜひとも完成させたいです。
<寺脇 元二 (テラワキ ゲンジ)>
1963年に日本電信電話公社 電気通信研究所に入社、以後、D10電子交換機の通話路系の開発に携わる。D10形電子交換機の経済化を目指したSMMスイッチ等を使用した方式の実用化を手掛け、アナログ電子交換機の最終モデルとして全国導入に結びつけた。
2009年OB運営サポーター創立時よりご活躍。
<千葉 由一 (チバ ヨシカズ)>
1969年に日本電信電話公社 電気通信研究所に入社、以後、D10電子交換機の通話路系の開発に携わり、次にD70ディジタル交換機の開発などを手掛ける。
2010年よりOB運営サポーターとしてご活躍。