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OB運営サポーターについて
動態展示用として復元に成功!「磁石式手動交換機」
2014年9月、復元第2弾となる「磁石式手動交換機」が1階ロビーに仲間入りしました。
もちろんこの復元も、OB運営サポーターによるものです!
◇◆磁石式手動交換機とは◆◇
これは、交換手の手操作(手動)により2つの電話機を接続する交換機で、各電話機ごとに内蔵した乾電池から通話電流を供給して通話する方式でした。
この磁石式交換機は、昭和54年(1979年)に電話の全国完全自動化にいたるまで、農村・山村などの小局用標準交換機としてひろく使用されました。
体験方法
発呼者 (電話をかける人) |
交換手 (電話をつなぐ人) |
被呼者 (電話をうける人) |
---|---|---|
受話器をオンフックのままハンドルをまわし、交換手に発呼を知らせてから受話器をとり、交換手からの応答を待つ。 | →発呼者のパネルが開く | |
発呼者が繋がれているジャックへ紐のついた接続コードプラグを差し込み、電鍵を手前に倒して応答する。 | ||
交換手に接続先を知らせる。 | 発呼者から接続先を聞く。 | |
対応するプラグを被呼者が繋がれているジャックへ差し込み、電鍵を奥へ倒しながら交換機のハンドルをまわし、被呼者の電話機を鳴らす | →呼び出し音が鳴る | |
電鍵を手前に倒して被呼者の応答を待ち、被呼者が応答したら電話がかかっている旨伝える。 ※被呼者が応答しない場合、呼び出しと応答を聞く動作を繰り返す。 |
受話器をあげて応答し、交換手から電話がかかっている旨知らせを受ける。 | |
電鍵を中立に戻す。 | ||
被呼者と通話 | 発呼者と通話 | |
通話終了に伴い、受話器を置く。 | 通話終了に伴い、受話器を置く。 | |
受話器をオンフックのままハンドルをまわし、交換手に通話終了を知らせる。 ※被呼者から通話終了を知らせることも可能。 |
→終話表示盤のパネルが開く | |
終話確認後、接続コードのプラグを抜くとともに、開いたパネルを手で戻す。 |
寺脇さん、千葉さんへのインタビュー
■今回、なぜ手動交換機を復元しようと思ったのですか?
前回、A形自動交換機の復元を手がけましたが、あの動態展示は、自動機械としてのメカニカルなスイッチの動作を見てもらうことができる展示です。
一方、今回の磁石式手動交換機の動態展示は、この交換機を使って、交換手が目、耳、手、そして頭の働きによってどのように交換接続動作を行ったかを実体験してもうらことができる展示です。
同じ”交換機”の動態展示といっても、一方は機械の仕組みを目の当たりにできる展示、一方はそれをどのように使ったかという使い方を実体験できる展示、というように全くねらいが違うものです。
両方をあわせて体験してもらうことにより、通話トラフィックの増大により交換手の負担が過重となったことなどの理由から、手動交換機から自動交換機の開発へと進むことになった時代背景をより理解していただけるものと思います。
■復元において一番苦労した点を教えてください。
前回のA形交換機と違い、設計図や実装図等の資料があまり残っていなかった点で大変苦労しました。
例えば、何かの資料に「LK電鍵」「RK電鍵」と書いてあるのですが、普通「LK電鍵」と「RK電鍵」がそれぞれ左右にあるものと思いますよね。
実際は、電鍵は1つしかなく、また、おそらくですが、「L」は”Listen”、「R」は”Ring”で、「LK電鍵」とは電鍵を手前に倒した状態(通話”Listen”状態)、「RK電鍵」とは電鍵を奥に倒した状態(呼び出し”Ring”状態)を指しているのだと、試行錯誤の末わかりました。
ただ、自動交換機と違って、配線などの仕組みは単純なので、その点は助かりました。
もう1点非常に苦労したのは、真鍮製のプラグやジャックが酸化被膜で覆われて真っ黒だった点です
。
普通、A形交換機などは-48Vの電圧を使用しますが、この手動交換機は乾電池による数V程度の電圧のため、酸化被膜が破壊されなかったのではないかと思います。加えて、きわめて長期間空気にさらされていたことから、このように被膜が固く付着してしまったのでしょう。そのため、電気的には不導通になってしまっていました。
そこで、ひとつひとつ紙やすりで被膜をこすり落としたり、エアダスターでジャック内を掃除したりしましたがなかなか落ちず、まだ接続状態の悪いものがいくつか残っています。
■復元において、印象に残った点を教えてください。
手動交換機にリングバックトーンがないという事実が印象的でした。
そのため、発呼者は交換手に発呼を知らせても、発呼を示すパネルがパカッと開いたかどうかもわからず、交換手から声で応答があるまで無音の受話器を耳にあてて待っていたのだと思います。当時は、交換手が応答するのも時間がかかったでしょうから、きっと不安だったでしょうね。
信号方式の違いをあらためて実感しました。
■この復元はまだ終わりでないと聞いてます。今後の展望をお聞かせください。
現在、交換機に接続してある電話機は4号電話機と同世代のものを使っています。 そのため、時代背景をあわせるために、それをデルビル磁石式電話機に替えたいと考えています。
ただ史料館で保存しているデルビル磁石式電話機は古く、正常動作するセットが見当たらないため、現在デルビル電話機の解体調査をしているところです。
また、試行錯誤の末、”きっとこのように交換接続したのだろう”という想定のもと今回の動態展示を実現しましたが、果たして本当にこの交換接続の仕方であっているのか細かい部分は不安がありあます。昔、電話交換手をされていた方などを探して、ぜひそのあたりを確認できればと思っています。先日ご来館された方が「おばあちゃんが昔電話交換手をやっていた」とおっしゃっていましたが、いつの日かそのような方が噂を聞きつけてご来館してくださるのを心待ちにしています。
次の復元構想は、公衆電話の銭音を聞くことができる動態展示ということです。銭音を聞いたことある方は非常に少ないでしょうから、実現成功すれば非常に貴重な展示になりますね。期待しています! 寺脇さん、千葉さん、どうもありがとうございました。
<寺脇 元二 (テラワキ ゲンジ)>
1963年に日本電信電話公社 電気通信研究所に入社、以後、D10電子交換機の通話路系の開発に携わる。D10形電子交換機の経済化を目指したSMMスイッチ等を使用した方式の実用化を手掛け、アナログ電子交換機の最終モデルとして全国導入に結びつけた。
2009年OB運営サポーター創立時よりご活躍。
<千葉 由一 (チバ ヨシカズ)>
1969年に日本電信電話公社 電気通信研究所に入社、以後、D10電子交換機の通話路系の開発に携わり、次にD70ディジタル交換機の開発などを手掛ける。
2010年よりOB運営サポーターとしてご活躍。