展示パネル情報
3階フロア
モバイルネットワークの技術(移動体)
ひろがる移動体通信の世界
船舶通信から携帯電話へ、マルチメディアへ
セルラー方式で一変した移動体通信の世界
無線技術を用いた移動体通信は、1953年に横浜港や神戸港で開始した港湾電話サービスに始まる。その後、列車、自動車、航空機にその適用範囲を広げながら、移動体通信の技術は進化を遂げてきた。データ通信も可能な携帯電話の普及によって、今後本格的なモバイルマルチメディアの世界が広がろうとしている。

移動機に見るモバイルネットワークの系譜
船舶通信から携帯電話へ、マルチメディアへ
進化し続ける移動体通信の世界
無線技術を用いた移動体通信は、1953年に横浜港や神戸港で開始した 湾岸電話サービスに始まる。そのあと、列車、自動車、航空機にその適応範囲を広げながら、 移動体通信の技術は進化を遂げてきた。 そして音声の伝達手段からデータ通信によるモバイルマルチメディアの世界へ。 コミュニケーションの新たな領域へと広がり続ける

大阪万博コードレス電話
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初期のムーバ
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初期のショルダーホン
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初期のポケットベル受信機
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硬貨投入式自動車電話
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初期のPHS
ポケットベルの進化
無線呼び出しから手軽な情報端末へ
ディジタル化で実現したメッセージ機能
用件があることを無線で伝えるポケットベルのサービスは、1968年に東京23区内から開始した。その後、通信方式の進展と需要の増加に伴って、サービスエリアが全国に広がるとともに、単なる呼び出しのための手段から、情報配信サービスや電子メールの受信に対応した手軽な情報端末へと進化した。
エリア拡大と方式技術
ポケットベルのサービスエリアが全国に広がるに従って、伝送方式もアナログのトーン方式からディジタル方式、さらにFLEX-TD方式へと進化した。どの方式もその当時最新の要素技術により実現されている。
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受信機の構成
ポケットベルの受信機は、受信回路とループアンテナで構成される。受信回路のIC化などによる小型化と、ループアンテナの感度の向上などによって、受信機の小型化や省電力化、性能の向上が図られている。
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トーン方式の概要
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NTT1,200bps方式の概要
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FLEX-TD方式の概要
高速・大容量化への進歩
位相ずれを克服した高度な技術
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ポケットベルのサービスエリアには、一般に、無線呼出装置のある〈中央局〉と複数の〈基地局〉がある。一般電話から公衆電話網を経由して中央局に送られたメッセージは、無線アドレスとともに符号化されたあと、各基地局を経由してポケットベルに届く。このメッセージの伝送には、さまざまな最新技術を導入している。
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初期の無線呼出し装置(ダイオードピン設定方式)
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位相補正技術
自動車・携帯電話の研究開発
世界初のセルラー方式商用化へ向けて
60年代に始まる本格的な研究開発
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自動車・携帯電話の開発は、400MHz帯を用いた新しい方式の研究から始まる。1979年に800HMz帯を用いた自動車電話方式を世界で初めて商用化するまで、さまざまな基礎技術の研究を続けてきた。また、移動機の小型化や高性能化を目指して、自動車電話やショルダーホンなどの試作や実験を重ねた。
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400MHz帯を用いた研究開発
大都市方式から中小都市方式へ
地域に適した効率的ネットワークの形
自動車・携帯電話サービスは1979年に大都市方式として、800MHz帯を利用してサービスを開始した。この利用が進むにつれて、さらに複雑な地形に沿って人口が集中する地方都市での需要が高まり、その対応として1984年に地形や加入者数にあわせた効率的なネットワーク構築が可能な中小都市方式を導入した。
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大都市方式
大都市方式では、サービスエリアを構成するセルで同一周波数を繰り返し利用する。また、周波数シンセサイザによる無線チャネル切替移動機を利用したり、移動機の位置を追跡するための新しい移動交換方式を採用した。
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中小都市方式
中小都市方式では、地形や加入者数に応じてサービスエリアを形成する。また、制御信号のディジタル化と、同時送信における波形オフセット方式の採用によって、通信品質及び接続率が向上した。
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無線ゾーン構成の概要
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移動無線機の構成
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複局同時送信の技術
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基地局のアンテナ技術
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自動車電話機のアンテナ技術
大容量方式は加入者数の飛躍的増加に対応
周波数利用効率でアナログ世界一を実現
1984年の全国広域サービスの開始とともに、自動車電話の普及による周波数不足が都市部を中心に問題化した。これを解消するために、1988年東京地区を皮切りに大容量方式を導入し、加入者容量が飛躍的に増大した。本方式はアナログ方式として世界一の周波数効率を実現した。
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大容量方式の概要
無線チャネル間隔の狭小化やダイバーシチ受信、同一チャネル干渉検出などの各種新技術による加入者収容能力の増大と、移動機の小型化などを図った自動車電話方式である。
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ダイバーシチ受信
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複局同時/順次送信
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ビームチルトアンテナ
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アンテナ鉄塔の標準化
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通話中チャネル切替
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低消費電力化の技術
PDC方式は標準化されたディジタル方式
複数事業者間の利用が可能に
従来のアナログ方式では、1台の携帯電話端末を複数事業者の移動通信網間で利用(ローミング)することはできなかった。自動車・携帯電話では、ディジタル方式がPDC(パーソナル ディジタル セルラー)方式として標準化されたため、国内のどこでも利用できるようになった。
PDC方式の概要
PCD方式は、1993年に800MHz帯、翌94年に1.5GHz帯という、2種類の周波数帯に導入した。アクセス方式には、TDMA方式を採用しており、従来のアナログ方式よりも通話品質やシステムの経済性、周波数効率に優れている。さらに95年にはハーフレート方式の導入により加入者容量が倍増した。
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PDC方式のシステム構成
PDC方式のシステムは、移動通信制御局(MCC)、基地局(BS)、移動局(MS)で構成する。 また、移動通信制御局と基地局の間は、1.5Mbpsまたは2Mbpsのディジタル伝送路で接続する。
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PDC方式における移動機の構成と特徴
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自動車・携帯電話方式の標準化
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移動機のキーテクノロジ
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基地局の構成
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ハーフレート化技術
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IV-840 120°ビームアンテナ
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不感知対策
W-CDMA開発の歩み
本格的モバイルマルチメディアの実現
移動体通信においても、インターネットなどを利用する非電話系サービスやマルチメディア通信サービスの需要が増大しており、高速かつ大容量のデータ通信を実現するシステムが求められている。W-CDMAは、周波数資源を効率よく利用して、できるだけ多くの加入者を収容するとともに、高速データ通信を実現するために開発された無線アクセス方式である。
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IMT-2000
IMT-2000は、国際電気通信連合(ITU)で標準化された次世代移動通信システムの国際標準規格である。W-CDMAはこのIMT-2000の無線アクセス方式の一つとして採用されている。
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移動通信の代表的な多元接続方式
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W-CDMAの要素技術
増大する需要に応える周波数利用効率を
セル構成と置局設計の技術
サービスエリアをセル(無線ゾーン)に分割してユーザを追跡接続する考え方は、移動体通信特有のものである。増大する需要への対応と無線周波数の有効利用の追求に伴って、セルの大きさや構成は変化し続けている。また、セルの構成は、電波伝ぱん特性や置局設計技術などの進歩に深く関わっている。
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セル(無線ゾーン)形状の変遷
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置局設計の技術
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電波伝ぱん特性の測定技術
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実測CELLDESによるデータ処理結果
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実測〈CELLDES〉のシステム構成
移動する端末機と確実に接続する
モバイルネットワークの回線制御技術
固定通信網では、発着信時の呼接続、回線監視、終話処理などの回線制御が行われる。移動通信網では、固定通信網と同様の回線制御が行われるとともに、セル間移動時の接続切替や、無線キャリアやスロットの指定と管理を行う〈無線回線制御〉が行われる。
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発信接続
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着信接続
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位置登録
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ハンドオーバ
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誤り制御技術
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CR-841形基地局制御装置
PHSの進化
ディジタルコードレス電話機を屋外や地下街へ
データ伝送や構内エリアへも展開
PHSは、家庭やオフィスで利用されているディジタルコードレス電話機を、屋外や地下街などでも利用できるようにする目的で開発された。1993年に〈PHS〉の標準規格が策定され、1995年からサービスを開始した。その後データ通信にも利用され、広く普及して現在に至っている。

PHSの特徴
PHSは、屋外で使用できるコードレス電話であり、次の特徴がある。
- 多種多様な利用形態
同じ端末を、家庭でのコードレスホン電話の子機、子機間でのトランシーバ、屋外での公衆携帯端末などとして利用できる。 - 高い通話品質
無線区間が32kbpsディジタル方式であるため、秘話性に優れているとともに、高い通話品質を実現している。 - 小さい消費電力
マイクロセルの採用により子機の送信電力を小さくすることができ、さらに送信電力を細かく制御したり(自営モード)、受信の待ち時間にスリープ制御を行うことにより、消費電力を低減している。 - 安価な利用料金
PHSでは、ISDNなどの既存ディジタル網を有効利用して通信を行うため、安価な料金でサービスを提供することができる。

PHSのシステム構成
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PHSによるデータ通信
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PHSの進化
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マイクロセルと回線制御技術
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事業所コードレス電話
陸海空にひろがる移動体通信
船舶・列車・航空機
交通運輸の発展とともに
移動通信の本格化は、当初は港湾でのみ行われていたサービスであったが、運行中の船舶からでも通信が可能となり、面的な広がりをみせた。さらに、列車や航空機などの運行中にも乗客の通信の要望に応えられるよう、公衆電話などを設置した。現在では、いつでも、どこからでもかけられる電話が実現し、社会活動における利便性の向上に大きく貢献した。
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列車公衆電話
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航空機電話
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船舶電話
衛星移動体通信の技術
N-STARを見通せる場所ならどこでも
静止衛星を利用する移動体通信の展開
1996年から静止衛星N-STARを利用した衛星移動通信サービスが、衛星を見通せる日本全土および200海里経済水域をエリアとしてサービスを開始した。船舶電話サービスの継承エリア拡大、さらに衛星通信と地上通信のそれぞれの電波を自動で選択するデュアルモード方式を導入し、移動通信サービスとしてのエリアを飛躍的に拡大した。

衛星通信の変遷
1963年に静止衛星の打ち上げが成功して以降、わずか3年後には人工衛星を衛星通信や0移動体通信に利用する計画が始まった。1979年には、わが国の提案によりN-STAR衛星にSバンドを分配し搭載している。
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衛星通信に利用される周波数帯
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静止衛星を利用する衛星移動体通信
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N-STAR衛星移動通信システムの概要
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衛星携帯・自動車電話の利用形態とサービス
モバイルネットワークサービスの進展
電信電話からインターネットへ
多彩な情報流通サービスの展開
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最近の通信技術の進歩、ユーザニーズの多様化、インターネット普及を背景としたネットワークの高度化は著しい。音声通信を基本として開始した移動体通信サービスは、各種メール通信などの非電話サービス、iモードに代表される無線インターネット接続などのモバイルマルチメディアへと進展を続けている。